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SDGs達成に向けた札幌宣言の実行-ありたい未来社会のための化学工学- <ライブ配信併用>

開催概要

日時: 2023年3月17日(金) 13:00~17:00

会場: 化学工学会 第88年会 X会場(ライブ配信併用開催)  

主催: 戦略推進センター SDGs検討委員会

共催:地域連携カーボンニュートラル推進委員会・男女共同参画委員会

協賛:日本化学工業協会、新化学技術推進協会

後援:日本学術会議

オーガナイザー:野田優(早稲田大学)、木村雅晴(住友化学)、饗場聡(日本化学工業協会)、藤岡沙都子(慶応義塾大学)、天沢逸里(東京大学)

開催趣旨: 化学工学会は、2019年9月APCChE2019において『国連持続可能な開発目標(SDGs)に関する宣言-人々の「健康、安心、幸福」のための化学工学-』と題する札幌宣言を発表しました。SDGsを共有ビジョンとし、化学工学者が、化学工学と関連する技術の進歩を通して、人々のウェルビーイングの推進へ貢献することを第一の目的としています。

この札幌宣言の実現に向けて、これまでの秋季大会や年会において「多様な分野の協働で実現するサーキュラーエコノミー」「安全な水への化学工学の貢献」,そして「多様な人材が活躍する未来の化学工場」といった宣言に含まれる内容に関連したテーマでシンポジウムを開催し、全員参加型のグループ討議も行い、学会内外の方々と議論を深めてきました。

今回の年会シンポジウムでは、札幌宣言の共有ビジョンである「EfficiencyからSufficiencyへ、効率性を追い求める社会から充足性を感じられる社会への変革」について、SDGs検討委員会のメンバーで取り組んだ活動の成果をテーマとして取り上げます。活動の成果は、具体的には①EfficiencyとSufficiencyは対立する概念ではなく、Efficiency + Sufficiencyであること。②技術者は「ユーザー(=社会の構成員)と一緒に社会づくりを進めている」認識が必要であり、③地域毎に何を必要としているか(解決すべき社会課題)を勘案して、それに対して「既存の技術が適合するか」、「適合技術が無いならどんな技術が必要なのか」を考えることが重要であることを基本コンセプトとしてまとめました。得られた基本コンセプトを題材に、他分野の人と議論し意見や考え方を融合して、札幌宣言の共有ビジョンを具現化し「ありたい未来社会のための化学工学」への道を探ることを目的とします。

プログラム

13:00-13:05 開会挨拶  (早大先進理工) (正)野田 優氏
13:05-13:30 [依頼講演] 効率性と充足性を共に確保する研究開発を目指して (住友化学) ○(法)木村 雅晴氏・ (日化協) (法)饗場 聡氏・ (三井化学) (法)八木 正氏・ (東大院工) (正)平尾 雅彦氏・ (東北大WPI) (正)阿尻 雅文氏
13:30-13:55 [招待講演] カーボンリサイクル政策 (経済産業省)羽田 由美子氏
13:55-14:35 [招待講演] 三井化学の組織横断的オープンラボラトリー活動“そざいの魅力ラボ(MOLp🄬)”~ 研究者が自ら世の中に問く熱量コミュニケーション ~

(三井化学)(法)宮下 友孝氏

14:20-14:35 休憩  

14:35-15:00

[展望講演] 石油化学からバイオマス化学へ ~多様性の包摂と活用~ (三菱総研)(正)小宮山 宏氏

15:00-16:00

グループ討議  

16:00-17:00

サマリー・交流会  

 

講演要旨・チラシ

講演要旨データ

プロモーション動画

グループ討議結果

グループ1:効率性と充足性を共に確保する研究開発を目指して


 本セッションでは、Efficiency(効率性)とSufficiency(充足性)を共に確立する研究開発を目指すということについてディスカッションを行った。現在のEfficiencyを追う研究開発からEfficiency + Sufficiencyに移行する上で重要になってくるのが「真のwants」は何なのかということである。議論では、「ダイバーシティ」がキーワードとなった。どこの誰の幸福、安心感を求めていくのかについて知っておく必要があり、価値観の違いを見極め、相手に合わせて課題の解決をしていかないといけない。例えば、現状の課題解決のために日本の技術が海外に展開されることがあるが、現地で何が本当に求められているのか、「真のwants」に沿っていないといけない。Sufficiencyも満たす技術開発を行うには、現地の特徴をよく知っておく必要があり、広い意見を回収する必要がある。関連して、持続可能な社会を実現するためにSDGsを達成するような技術開発が求められているが、これらのゴールを全て同時に実現することは難しい。そのため、SDGsは必達目標にはならず、求められているゴールを実現するという考え方ができる。これらのゴールの中で誰がどれを求めているのかについて知る必要があり、改めて、化学工学の範囲に限らず、技術者を超えて広い意見交換をしながらwantsに応えていく必要があると考えられる。

グループ2:カーボンリサイクル政策


 グループ2では、カーボンリサイクル政策の現状と今後の課題について議論を深めた。
 経済産業省ではカーボンリサイクル推進に向けた技術開発の支援や、環境に良いプロダクトへの補助や適切な法改正などを行っている。政策を作るにあたって本当に重要な制度や技術を見極めていくことが重要であり、そのためにも有識者による数多くの検討会を実施している。近年、新技術の開発に向けてLCA(ライフサイクルアセスメント)による事前評価が求められているが、LCAでは時間軸について考慮しないため、現在の基準と将来の基準ではLCAの結果が異なる可能性がある。カーボンリサイクル技術などの将来の技術を評価するためのLCAの手法について議論して早急に合意をとっていく必要があることを議論した。また、政策を立案する際には、個々の技術に着目するだけでは全体が見えてこないことがあり、カーボンニュートラル実現というあるべき社会を見据えた上で、重要な技術や政策を見極める必要性を議論した。イノベーションの加速には、産学が連携し、基礎研究と事業化に取り組むことが重要である。カーボンリサイクルの社会的な普及のために、継続的な技術開発への投資やスケールアップ、インセンティブの付与、人材育成やカーボンリサイクルへの理解促進等、多くの課題が存在するが、産学官が繋がりを深め、一体となって地球規模の課題に取り組んでいくことが重要であることが挙がった。

グループ3:三井化学の組織横断的オープンラボラトリー活動“そざいの魅力ラボ(MOLp🄬)”~研究者が自ら世の中に問く熱量コミュニケーション~


 本セッションでは、EfficiencyからSufficiencyへの移行というテーマだった。討議のポイントは3点挙げられた。1点目は,「①EfficiencyとSufficiencyは両立するものである」ということだ。これを達成するために②と③があるのではないかと私たちは考えた。まず、「②技術者はユーザーと一緒に社会づくりを進める」という点だ。MOLp(三井化学グループが100年以上に亘り、継承し、培ってきた素材や技術の「機能的な価値」や「感性的な魅力」を、あらゆる感覚を駆使して再発見し、そのアイデアやヒントをこれからの社会のためにシェアしていく三井化学グループのオープン・ラボラトリー活動)では、開発した商品の展示会を開くことで,技術者と市民・消費者とのコミュニケーションが生まれている。また社内でも、雑談の場を増やすだけでなく、雑談をしやすい場のデザインも重要視しており、社内環境の改善をしていた。次に、「③地域ごとの科学ニーズの適合性」という点だ。講演の途中で紹介された“なごり樹脂”だけでなく、様々な商品で地域の廃材を使用する活動を行っていた。以上をまとめるとMOLpの活動は、②の点において、技術者・市民・消費者・生産者、様々な立場の人を巻き込んでSufficiencyを満たしている。一方、③の点において、地域との繋がりを素材を通して強めていくことで地方創生に貢献していることから、地域と技術者の立場でSufficiencyを満たしていると考えられる。このMOLpの活動、MOLイズムがさらに広がることで、SDGsだけでなく、“ありたい未来社会のための化学工学”という面でも、EfficiencyとSufficiencyの両立につながるのではないかと考えられる。

グループ4:石油化学からバイオマス化学へ ~多様性の包摂と活用~


 私のグループではバイオマス資源が実際に運用されていくために、日本の法規制を変えることの必要性についてディスカッションをした。
 バイオマスを作ることができるのに使われていない膨大な耕作放棄地があり、それを活用したいが、できていないというのが現状である。社会は変わっているが、過去に作ったシステムをそのままにしたいということが新しい社会への障害になっている状況である。そのような規制を変えるためには、知識を身につけて問題であると認識して、変えようとする声を上げること、そのような意識が必要である。
 これからを生きていく私たちがきちんと勉強して発信していくことが必要である。