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SDGs達成に向けた札幌宣言の実行 - 多様な人材が活躍する未来の化学工場 -<ライブ配信併用>

開催概要

日時: 2022年3月17日(木)13:00~17:00

会場: 化学工学会 第87年会 E会場 HC-11 会場 (ライブ配信併用開催)  

主催: 戦略推進センター SDGs検討委員会

共催:男女共同参画委員会・地域連携カーボンニュートラル推進委員会

協賛:日本化学工業協会・新化学技術推進協会

後援: 国際連合工業開発機関(UNIDO)・日本学術会議

オーガナイザー:野田 優(早稲田大学)・藤岡 沙都子(慶応義塾大学)・木村 雅晴(住友化学(株))・湊 登美(新化学技術推進協会)

開催趣旨: 化学工学会は、2019年9月APCChE2019において『国連持続可能な開発目標(SDGs)に関する宣言-人々の「健康、安心、幸福」のための化学工学-』と題する札幌宣言を発表しました。

札幌宣言では、SDGsを共有ビジョンとし、EfficiencyからSufficiencyへ、すなわち効率性を追い求める社会から充足性を感じられる社会への変革を謳っています。化学工学会はこの宣言を学会内外に広め、実行に移すべく議論を重ねてきました。
持続可能な社会の実現に向けた取り組みの中でも、カーボンニュートラル対応への変革が化学産業の喫緊の課題となっています。効率のみを重視すると、例えば工場を再エネ豊富な海外へ移すという答えに行き着くかもしれません。 本シンポジウムでは、地域社会との共生や、多様な人材の活躍と働きがいという充足性の観点も取り入れ、未来の化学工場のありたい姿を議論します。 講演に続けて、サブテーマごとにグループに分かれて参加型のワークショップを実施します。双方向でのインタラクティブなシンポジウムを一般公開で開催します。

プログラム

13:00-13:05 開会挨拶  (早大先進理工)  野田 優 氏
13:05-13:30 [依頼講演] 札幌宣言 -人々の「健康、安心、幸福」のための化学工学- EfficiencyからSufficiencyへ (東北大WPI-AIMR) (正)阿尻 雅文氏
13:30-13:55 [招待講演] SDGsを支える生産革新の取り組み (ダイセル) (法)三好 史浩氏
13:55-14:20 [招待講演] 「Change and Innovation」化学工場における女性エンジニアの成長と活躍に向けて (住友化学) (正)山口 敦氏
14:20-14:30 ・休憩  

14:30-14:55

[招待講演] 女性部下を育てる上司力 ーどのように振る舞い、どう考えるか (法政大) 高田 朝子氏
14:55-15:10 [依頼講演] SDGs検討委員会活動報告 (慶應大) (正)藤岡 沙都子氏

15:10-16:00

グループ討議  

16:00-16:30

サマリー  

16:30-17:00

交流会  

 

講演要旨・チラシ

グループ討議まとめ動画

プロモーション動画

グループ討議結果

グループ1:札幌宣言-人々の「健康、安心、幸福」のための化学工学-EfficiencyかSufficiencyへ


人という視点を評価軸に組み込むことや、未来の人のために施策を作るとはどういうことなのか、現代人が仮想将来人の齟齬をどのように解消するのかが難しいと感じた。 新しい製品を作るときに、どういう評価項目を作るかを決める際に、安全、環境負荷に加えて人が軸に入ることで、製品開発が変わってくる。札幌宣言では、新しいことをつくるというよりも、現在行っていることを改善し「人」という視点を組み込んでいくということで、今までの化学工学の延長線上となるため取り組みやすいと感じた。
未来を考えて施策を作る際に、現代人が未来のために描く施策と仮想将来人になって考える施策は違うため、仮想将来人になる難しさはやってみないとわからない。それに対して若い世代が積極的にチャレンジしていくことが重要だと感じた。未来の観点でも数年単位なのか、数十年単位なのかによっても状況が違うので、段階的に考えるのが良いと思った。現状2030年までは想定できている企業は多いが2050年以降を考えられている企業は少ない。1社で解決していくのは難しいが、バウンダリーを広げ、同業界から他業界まで巻き込んで生産から処理までのフロー全体で考えていくことでEfficiencyからSufficiencyへと目指していける可能性が広がると感じた。

グループ2:SDGsを支える生産革新の取り組み


ダイセルの化学工場における生産革新の取り組みの好影響として、多様な人材が活躍できる化学工場の実現に貢献したという点が議論された。従来の化学工場は視認性が低く、オペレーションのノウハウはベテランだけが保有していたが、生産革新によってノウハウが可視化され、女性や若手を含めベテラン以外の人材も化学工場で活躍できるようになった。また、予測システムの活用で負担が軽減されたことによって、トラブルが起こったとき、女性や若手が現場に出て改善策を提案できるようになったという事例も挙げられた。人員削減により、定修後の立ち上げなど人員が不足する場面もあるのではという側面も指摘されたが、工場の立ち上げ方についてもベテランのノウハウが可視化されているなど、多岐に渡る生産革新の好影響について議論された。
生産革新に関連して、未来の化学工場の在り方についても様々な意見が交わされた。特に、化学工場で働くことのリスクやモチベーションの低下などを背景に、若手や中堅社員の人材流出が起こっている問題が注目された。これらの問題に対応するため、リモートで制御できる工場や、小さなスケールで生産する方式に今後シフトしていくのではといった意見も出された。未来の化学工場がどのようなものであれ、多様な人材が活躍できる生産革新が今後も必要になると結論付けられた。

グループ3:「Change and Innovation」化学工場における女性エンジニアの成長と活躍に向けて


■制度の仕組みに関して
 企業において、時間対価ではない働き方や個人がライフプランの設計を選択できるような仕組み(女性も男性も自由に育休をとることができる仕組みや育休をとりながらも自宅で短時間仕事ができる仕組み等)が必要なのではないか。また企業側は個人の性別や人種といった属性に左右されることなく人材を採用していくような仕組みも必要である。しかし、一方でライフプラン等を制度といった枠組みで一括りに固めてしまうと多様性や柔軟性がなくなってしまうのではないかといった懸念もある。
 
■職場の環境・アンコンシャスバイアスに関して
 理系は長時間労働で大変なイメージがあるが、手に職がつく職業(特にドクター取得)でもあるため育児休暇などで一時仕事から離れたとしても再起しやすい。しかし、その大変さ故男性上司が女性にさせるのはかわいそうだと勝手に判断し、女性が成長できる機会を奪うのは良くない。女性が活躍できるような環境づくりは小中高初等教育の段階からでも行っていくべきである。またひと昔前は女性エンジニアのロールモデルというのはなく、自身の行動に責任をもって選択していくしかなかったが、現在は比較的多くの女性ロールモデルが存在する。また女性が活躍できる環境づくりには女性よりむしろ男性のロールモデルというのが必要なのではないだろうか。
 アンコンシャスバイアスに関しても、それは必ずあるということに気付くことが大事で、結局は思いやりが大事で相手の立場に立って話をすることが必要である。もし上司の立場ならば、きちんとコミュニケーション相手のことをよく知る必要(例えば人間は失敗するものであるといった認識)があり、また常に余裕を持った行動をすることで風通しの良い職場づくりを行っていく必要がある。それらのことがD&Iの推進につながっていくのではないか。

グループ4:女性部下を育てる上司力 -どのように振る舞い、どう考えるか


「女性部下を育てる上司力 -どのように振る舞い、どう考えるか」という題目で、講演者の高田朝子氏含め13人で議論した。女性の苦悩の一つである時間不足を改善する方法として、今の業務内容を考えて、無駄をそぎ落とすべきだと考えている。
 女性社員が「自信がない」と考えることの理由について、文化の違いがある。女性が男性の間に入って指示を出すことは女性にとってかなりの負担になる。アメリカでは日本と同じように、女性が少数派であるからこそ自信がなくなる人が多いが、北欧は女性比率がほぼ半々なので、そういったことは少ない
 人事について、人を評価する際には「労働時間の長いこと」を評価軸にしない。その人自身を見ることが必要。こういう女性が働きやすい環境・制度があります!というだけではなく、抽象的で言語化しにくい部分を説明することは大事だ。

グループ5:持続可能な化学産業のためのイノベーションとその要素とは?


 イノベーションという観点から、将来的に化学産業が貢献できることについて議論すべきだと考えた。その際、企業1社ではなく、サプライチェーンの中でステークホルダーを巻き込みながら取り組んでいくことが必要である。グローバルな視点から考えると、現在の日本の化学産業は競争力が低下しており、多様性を尊重し,働き方を変えていくことが世界に立ち向かう上で重要である。特に、若手・中堅の女性社員をチームに加えて、新しい発想を生み出していくことが不可欠である。この実現のために、企業における制度だけでなく、男性社員の意識改革といった環境作りが欠かせない。
 新しい素材についてもイノベーションを必要としており、ケミカルリサイクルや生分解性プラスチックなどの新しい技術を導入すべきである。その際、コスト面での課題を解決するための投資が要求される。
 また、ベンチャー企業への支援も化学産業のイノベーションに必要である。国内では財政的な問題で頓挫してしまうことが多く、海外のような手厚いバックアップ体制を敷くことが重要である。いずれの観点にしても、海外での事例を学び、取り入れることも検討すべきである。

グループ6:SDGs達成のための教育・研究・パートナーシップのあり方

 企業や学生など様々な観点をもとに、どのようにしてSDGsへの関わりをもたせていくべきか議論した。企業内での取り組みとしては、そもそもSDGsとは何か?という基本的な内容を浸透させる段階から始める必要のあるところが多く、浸透させるには時間がかかるという問題もあった。そのなかでも、業務がSDGsに寄与するような人は積極的なものの、そうでなければやらされている感が多いために、温度差が生じてしまう。そのため、自分の業務分野との結びつけを意識させ、さらに継続的に活動を進める必要があるとの意見が出た。立場により意識の差もかなり生じているため、積極的な交流も必要である。一方で、SDGsウォッシュとよばれる”実態が伴っていないのにSDGsに取り組んでいるように見せかけること”にも気を付けなければならない。ヨーロッパでは規制が厳しいが、今の日本の規制は緩いために認識の差が世界と生じている可能性があることも問題の一つである。
  SDGsの実現には、どれを大事なことと捉えるかが重要であると考えられた。例えば、水問題のような地域規模での問題は、必要な技術レベルを決める必要がある。現地の人にとってはむしろすでにある技術の方がよい場合もあるからだ。もちろん将来に向けた先端的な技術開発も必要となるため、現地で実際に求められている必要最低限の技術との兼ね合いを考える必要があるとの認識に至った。